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推薦文:竜 浩一(経営学部 准教授)
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大学で読む本というものは、様々な内容に満ち溢れていると感じます。阪南大学について言えば、漫画もあれば昔ながらの伝記、各種専門書、論述、就活戦略本、果ては旅行用の雑誌まで本学は取り揃えてあります。これら多数の本については、どこか時間がある際に、気軽に手に取って見てもらうことが大事だと感じています。
その中でも、今回はいわゆる研究に関する本、その中でも少し読みやすく、日常生活や物の捉え方に影響を与えられそうな一冊をご紹介します。それが、ハンス・ロスリング著『ファクトフルネス(FACTFULNESS)』(日経BP、2019年)です。
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書影サンプル
NDL 国立国会図書館サムネイル
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この本の著者はいわゆるお医者さんですが、ご自身が様々な国の医療現場で働いてきた経験や、教育者としても長年従事してきたことを踏まえて、最後の著書として書いたのがこの一冊となります。以下が、書籍にもある著者紹介です。
『ハンス・ロスリングは、医師、グローバルヘルスの教授、そして教育者としても著名である。世界保健機構やユニセフのアドバイザーを務め、スウェーデンで国境なき医師団を立ち上げたほか、ギャップマインダー財団を設立した。ハンスのTEDトークは延べ3500万回以上も再生されており、タイム誌が選ぶ世界で最も影響力の大きな100人に選ばれた。2017年に他界したが、人生最後の年は本の執筆に捧げた。』
本の内容としては、我々人間が保有する分断本能、ネガティブ本能、恐怖本能といった思い込みの影響力の大きさを説明し、どのようにそういった思い込みから脱却するかを取りまとめたものとなっています。つまり、事実・データをベースにして、しっかり考える重要性について繰り返し主張されている本といえます。また、全体の文体も柔らかく、カジュアルな読み物としてとりやすいという特徴もあります。見た目は分厚いですが、結構あっという間に読み終えてしまえるかもしれません。
例えば、イントロダクションでは多数の世界の実情に関するクイズが出題され、筆者の人柄の良さや人間性までもある程度知ることができ、非常に身近な人と話をしている感覚で本を読み進めることができるのです。
そして、本文の中で特に着目していただきたいのが、時代の変遷に伴って物事の用語や定義を再度変えてみてはどうかという提案です。具体的には、ファクトフルネスの中では途上国、あるいは発展途上国という用語はすでに古いという主張がなされています。すなわち、実際に今日において途上国、先進国という用語からイメージされる国の内訳や実情というモノは、多くが1970年代の実績で語られており、近現代(書籍の中では2017年頃のデータを根拠にしています。)の基準で見た際に、いわゆる発展が遅れて途上にあるという国は少数になってきています。実際に、本の中では統計指標として女性一人当たりの子供の数と、5歳まで生存する子供の割合の2つを利用していますが、我々がイメージする先進国(アメリカなど欧米諸国)と途上国(南米、中東、東南アジア、東欧など各地域)との差はほとんどなくなっており、特に子供の生存割合はどの国も100%近くまで改善されています。
こうした「統計的事実」を踏まえて、ファクトフルネスでは国家の平均所得や生活の状況という違いはあっても、先進と途上という言葉で表現されるような分断、格差的な関係性はあるべきではないという主張がされているのです。また、世界各国の状況を所得レベルという1日当たりの平均所得金額を使って国を4段階に分類すべきとしており、暮らしの違いをどのように改善していくべきかという、より深まった議論をすべきという主張をしています。世界は決して富裕層と貧困層だけに二分されるのではなく、時間をかけて少しずつ良くなっていくし、そのための努力を惜しんではいけないことを、この本は主張しているのです。
実際の統計数値に基づいた事実を踏まえて考えを述べている本書を読むことで、客観的事実の重要性、風説に惑わされない感覚を覚えていっていただければと思います。また、本書は様々な観点や角度から物事を捉える例えを多数出していることから、視野を広げる、という観点からも良書であると考えられます。今後の長い人生をより良いものにしようと少しでもお考えであれば、ぜひともお手に取って見てください。
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ハンス・ロスリング(Hans Rosling)[1948-2017]
ハンスは1948年にスウェーデンのウプサラで生まれた。ウプサラ大学で統計学と医学を学び、インドのバンガロールにある聖ヨハネ医科大学で公衆衛生を学んだあと、1976年に医師になった。(中略)1986年にハンスはウプサラ大学から博士号を取得した。1997年からはストックホルムにあるカロリンスカ以下大学でグローバルヘルスの教授を務めた。(中略)2005年には、息子のオーラとその妻のアンナとともにギャップマインダー財団を設立した。ハンスはまた、世界保健機関、ユニセフ、いくつかの国際援助機関のアドバイザーを務め、スウェーデンで国境なき医師団を立ち上げた。(中略)2009年にはフォーリン・ポリシー誌からグローバル思想家100人のひとりに選ばれ、2011年にはファスト・カンパニー誌から世界で最もクリエイティブな100人のひとりに選ばれた。また2012年にはタイム誌が選ぶ世界で最も影響力の大きなひとりになった。
―『ファクトフルネス(FACTFULNESS)』より抜粋
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オーラ・ロスリング(Ola Rosling)[1975-]
オーラは1975年にスウェーデンのフディクスバルで生まれた。ギャップマインダー財団の共同創立者であり、2005年から2007年までと、2010年から現在まで財団のディレクターを務めている。(中略)オーラはギャップマインダーでの功績が認められ数々の賞を受けている。2016年にナイラス国際統合開発賞を、また2017年にはレジメ・スーパーコミュニケーター賞と、金の卵賞を受賞している。
―『ファクトフルネス(FACTFULNESS)』より抜粋
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アンナ・ロスリング・ロンランド(Anna Rosling Rönnlund) [1975-]
アンナは1975年にスウェーデンのファールンで生まれた。ルンド大学で社会学を学び、ヨーテボリ大学で写真を学んだ。ギャップマインダーの共同創立者であり、バイス・プレジデントを務めている。(中略)アンナもまたギャップマインダーでの功績が認められ数々の賞を受けている。2017年にレジメ・スーパーコミュニケーター賞、金の卵賞、またファスト・カンパニー誌の世界を変えるアイデア賞を受賞した。
―『ファクトフルネス(FACTFULNESS)』より抜粋
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上杉 周作(ウエスギ シュウサク) [1988-]
IT技術者。カーネギーメロン大学でコンピューターサイエンス学士、ヒューマンコンピュータインタラクション修士取得。卒業後、シリコンバレーのPalantirTechnologies社にてプログラマー、Quora社にてデザイナー、EdSurge社にてプログラマーを経験。現在はフリーランスプログラマーとして活動するかたわら、不定期で実名ブログ「上杉周作」を更新中。
―『ファクトフルネス(FACTFULNESS)』より抜粋
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関 美和(セキ ミワ) [1965-]
翻訳家。杏林大学外国語学部准教授。慶応技術大学文学部・法学部卒業。電通、スミス・バーニー勤務の後、ハーバード・ビジネス・スクールでMBA取得。モルガン・スタンレー投資銀行を経てクレイ・フィンレイ投資顧問東京支店長を務める。主な翻訳書に、『アイデアの99%』(英治出版)、『TED TALKS』『Airbnb Story』(日経BP社)、『ハーバード式「超」公立仕事術』(早川書房)、『えんぴつの約束』(飛鳥新社)、『シェア』『MAKERS』『ゼロ・トゥ・ワン』(NHK出版)などがある。また、アジア大学(バングラデシュ)支援財団の理事も務めている。 ―『ファクトフルネス(FACTFULNESS)』より抜粋
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